君たちはどう生きるか|原作ネタバレと映画の違い…関係ないし無視パクり?

ジブリ映画『君たちはどう生きるか』。

タイトルは、宮崎駿監督が感銘を受けたということで、吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』から拝借しているということです。

が、内容は全くの別物となっています。

むしろ、ジョン・コナリー著『失われたものたちの本』が近いとか。

一体全体、どうなっているのでしょうか。

このページでは、以下のことについて、まとめています。

▪️映画『君たちはどう生きるか』原作はある?
小説『君たちはどう生きるか』との違いは?関係ない?無視パクりはある?)

▪️映画『君たちはどう生きるか』には他に原作がある?
(小説『失われたものたちの本当』パクり共通点違いは?)

▪️小説『失われたものたちの本』
あらすじネタバレ

※映画「君たちはどう生きるか」のネタバレを含みます

目次

映画『君たちはどう生きるか』に原作はある?

スタジオジブリは、『君たちはどう生きるか』に、原作はないとしている。

映画のクレジット表記も、「原作・脚本・監督 宮崎駿」となっています。

▼エンドロールまで感動する理由

映画『君たちはどう生きるか』と小説との違い・観客の反応は…

映画は小説を原作としておらず、
内容は全くの別ものです。

ですから両作品に違いがあるのかというと、
違いしかないということになります。

ですが、劇場に足を運んだ観客の多くが、
映画が小説『君たちはどう生きるか』を原作にしたものだと信じていました。

しかしいざ蓋を開けてみると、
映画は、小説を全然なぞらえていないことが分かります。

視聴者からは大きな反発の声が上がりました。

観客の反応(SNSより)

不満顔
写真AC(nonkosan777)

原作無視って…、好きになれない。

原作ガン無視。

これ、怒られないのかな

原作要素ほぼなし…

タイトル乗っ取り?

毎回原作ガン無視だからな

なぜ原作をガン無視したのか。

その回答としては、
映画『君たちはどう生きるか』と小説『君たちはとう生きるか』の間に、
原作という関係性はなかった、
ということになります。

映画『君たちはどう生きるか』は小説『君たちはとう生きるか』のタイトルを冠している他、
作品中に、主人公の書籍として登場します。

しかし冒頭にも引用させて頂いたように、

しかし、タイトルを「君たちはどう生きるか」にして作中で書籍を出して、ストーリーはほぼ関係なくエンドロールで「原作・脚本・監督 宮崎駿」って出すの、超巨匠だから許されてるけど若手がやったら殴られるよな

X

という反応もあります。

しかし今回は確かに監督が超巨匠の宮崎駿であり、
著者側からしても、
自分の執筆した作品がジブリ作品の中に登場するとあっては、
さぞかしうれしかったのでは。

映画公開にあたり、
書籍の売上がまた更に伸びる、という相乗効果も生まれ、
物語もまた更に多くのひとに読まれることとなりました。

小説『君たちはどう生きるか』は映画の原作ではないですが、
全く無関係という訳でもない、
というところがまたややこいですよね。

なぜ小説が映画の原作であるという誤解が生じたか

なぜ小説が映画の原作であるという誤解が生じたかというと、
スタジオジブリが広告宣伝を行わず、
映画の情報を開示していなかった
ことによるものが大きいかと思います。

本作品は、吉野源三郎著者『君たちはどう生きるか』を原作とはしていません。
宮崎駿監督が感銘を受けた作品であることから、タイトルのみ借用しています。

くらいのアナウンスがあった方が、
観客には親切だったのではないか、という気もします。

現実問題として、
原作が改悪されてしまう事例もあるわけで、
気分を悪くした観客も多かったようですので。

しかしそれをしなかったのは、
観客の予想をくつがえしたい、裏切りたい、という、
戦略的な部分も、もしかしたらあったのかもしれません。

小説『君たちはどう生きるか』は関係ない?

関係はある。

ジブリ『君たちはどう生きるか』は、小説『君たちはどう生きるか』をオマージュしている。
タイトルを冠している他、
作中にも主人公の本として出している

しかし映画の内容は全くの別物。

宮崎駿監督はなぜ小説からタイトルをもらったのか

宮崎駿が感銘を受けた本だから

14日には、スタジオジブリの宮﨑駿監督が、子どもの頃に吉野さんの小説を読んで感銘を受けたことから、タイトルに借用したという長編アニメーション映画『君たちはどう生きるか』が公開されています

日テレニュース(https://news.yahoo.co.jp/articles/a52297986f9ad921ff4b946858dea81c72f4691e)

小説『君たちはどう生きるか』は宮崎駿監督の思い出の本らしいです。

初めて読んだのは、
記憶では小学生のときで、教科書に載っていたのを読んだそうです。

『君たちはどう生きるか』が、
教科書にも採用されているというのは知っていましたか。

『君たちはどう生きるか』は、1950年より、小学5年生~中学3年生の教科書に採用されていました。(国語教科書の素材辞典より)

現在では、中学1年生の教科書に採用されています。

宮崎駿監督は1941年生まれなので、小学6年生のときに、教科書で『君たちはどう生きるか』を読んだということになりますね。

小学生のときに教科書で読んだ物語で、心に残る作品てありますよね。

思い出すと、なんだかエモいような気持ちになりませんか。

筆者の場合、たとえば『ごんぎつね』です。

宮崎駿監督は、
『君たちはどう生きるか』を作品中に登場させるだけではなく、
タイトルにも借用したということで、
『君たちはどう生きるか』
というダイレクトなメッセージは、
作品の中に込められているように思えます。

参考:書籍『SWITCH Vol.41 No.9 特集 ジブリをめぐる冒険』

小説『君たちはどう生きるか』を無視してパクっている?

君たちはどう生きるか公式(https://s.magazineworld.jp/books/kimitachi-s/)

吉野源三郎著者「君たちはどう生きるか

無視もパクりもない

作品のタイトルに著作権は生じません。

元作品をリスペクトし、タイトルを借用すること自体には、法的な問題は生じません。

タイトルをかぶることを気にしていたら、創作の妨げになる、というのが理由のようです。(狙わないでも自然にかぶってしまうもの)

ただし、元作品のファンに白い目で見られる可能性はあります。

また悪意がある場合にも、作者に訴えられる可能性があります。

それなので、タイトルを借用することは、あまり得策だとは考えられません。

さてジブリの場合、
タイトルの他、作中にも、主人公が母親から贈られた本として、『君たちはどう生きるか』が出てきます。

その本には著者名として、吉野源三郎の名前も出てきます。

ですから当然、スタジオジブリは事前に吉野源三郎さんに許可を得ていたものと思われます。

リスペクトしか感じられない演出ですから、
著者も快諾したことでしょう。

自身の作品が宮崎駿監督に感銘を与えていたという事実は、
作家としてきっとことさらうれしかったに違いありません。

しかし原作にはされないというのも、作者にとって、
作品が意図しない方向に改変されることを危惧する必要がないということで、
それはそれで気楽な良さがあったのではないでしょうか。

しかし世間には、
小説が映画の原作であると解釈した人が大勢いました。

当時は映画に関する情報も少なく、
紛らわしかったですから、
そうなることも致し方なかったといえます。

映画が公開されると、そのストーリーは極めて難解。

小説は爆売れし、
その発行部数は、公開月である7月には累計180万部を達成。
岩波文庫歴代1位を記録しました。

著者にとって、映画『君たちはどう生きるか』が制作されたことは、
無視されたパクられたどころか、嬉しいことづくしだったようですね。

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映画『君たちはどう生きるか』は書籍『失われたものたちの本』のパクり

映画『君たちはどう生きるか』は、書籍『失われたものたちの本』を、オマージュしているものと思われるパクりではないが、パクりといわれるくらいには似ている

映画「君たちはどう生きるか」には、原作とまではいかないまでも、元ネタにはなっているだろう小説があります。

それが、ジョン・コナリー著「失われたものたちの本」です。

ジョン・コナリーは、アイルランド出身の作家です。

読めばきっと、

(あれ?これジブリの「君たちはどう生きるか」じゃない?)

と感じるはず。

そして同時に、映画に対する理解も深まるのではないかと思います。

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写真を見ると分かるように、
本の帯には、宮崎駿監督の推薦本として、彼からのメッセージがしたためられています。

ぼくを幸せにしてくれた本です。
出会えてほんとうに良かったと思ってます。

書籍「失われたものたちの本」帯より宮崎駿氏推薦

いざ本を読んでみると、宮崎駿監督のこのメッセージの意味も分かります。

鈴木敏夫著者『ジブリの文学』を初め、『君たちはどう生きるか』関連書籍等に掲載されている、
宮崎駿監督が書いた映画の企画書には、次の内容が記されています。

2つ目。この本には刺激を受けたけど原作にはしない。オリジナルで作る。そして、舞台は日本にする。

この本というのがどの本のことなのか、具体的なタイトルは明かされていません。

しかし、ジブリ『君たちはどう生きるか』は、アイルランド人が書いた児童文学に刺激を受けてつくりた作品であることが、分かっています。

「宮さんが一冊の本をぼくに提示した。『読んでみて下さい』。アイルランド人が書いた児童文学だった」(『スタジオジブリ物語』)

https://www.google.com/amp/s/realsound.jp/movie/2023/07/post-1376389_2.html/amp

ということで、映画「君たちはどう生きるか」は、
ほぼ間違いなく「失われたものたちの本」の影響を受けて制作された作品であることが分かります。

しかし、原作にはしていない、ということですね。

原作というには、確かに変わりすぎています。

つまり、『失われたものたちの本』は物語のベースにはなったかもしれないですが、
パクりではない、ということですね。

宮崎駿監督が『失われたものたちの本』に刺激を受けた理由

クマのぬいぐるみがハートを持っている

失われたものたちの本』には、宮崎駿監督がずっと避けて表現せずにいたことが描かれていました。

それは、エディプスコンプレックスです。

エディプスコンプレックスとは、男根期(およそ4歳~6歳)の男児が異性の親である母親に対して愛着を抱き、同性である父親に対して対抗心を抱いたりする無意識の葛藤のことです。

https://psycho-psycho.com/oedipus-complex/

宮崎駿監督は、それまでは表現しなくて良いと思っていたらしいです。

しかし『失われたものたちの本』を読んで感化されたようです。

このままでは、大切なことをいわないままになってしまう気がする、と。

宮崎駿監督は、生臭い感情がうずまく等身大の少年の姿を描こうとした、ということのようです。

宮崎駿監督と主人公デヴィッドとの共通点

実は、『失われたものたちの本』に出てくる主人公・デヴィッドと宮崎駿監督の間には、複数の共通点が存在します。

  • 読書家
  • 母親を亡くしている
  • 裕福な家庭に育った
  • 戦争で疎開した

など。

これではきっと、感情移入しないことの方が難しいですよね。

失われたものたちの本』は、
想像いっぱいのファンタジー物語でありながら、
ついでに現実感もいっぱいの、リアルなファンタジーというイメージです。

そして宮崎駿監督は、筆者の知りうる限り、
“リアルさ”を好む傾向にあられるイメージです。

たとえば、アニメ声優のわざとらしい演技を嫌うという話があったりです。


ファンタジーでありながら、人間の生々しい感情が描かれた「失われたものたちの本」は、
宮崎駿監督にとって、感情移入しやすかったこともあり、
尚のこと特別な一冊となったのではないでしょうか。

宮崎駿監督が『失われたものたちの本』をリスペクトしていることは分かりました。

原作とはしていないものの、しかしパクりといわれることも。
その内容は、
一体どのくらい類似しているのでしょうか

映画『君たちはどう生きるか』と小説『失われたものたちの本』の、共通点や異なる点を確認していきます。
(ネタバレ含みます)

映画『君たちはどう生きるか』と原作?『失われたものたちの本』との共通点・違い

『君たちはどう生きるか』『失われたものたちの本』共通点

まずは、共通点からです。

  • 時代背景
  • ストーリー
  • 登場人物

時代背景

〈両作の時代背景は同じです〉

  • 『君たちはどう生きるか』…太平洋戦争末期の日本を舞台にしている(1944頃?)
  • 『失われたものたちの本』…第二次世界大戦下の1939‐1945年のイギリスを舞台にしている

ストーリー

主人公が母親(病気)を亡くす。

父親は別の女性と再婚し、その女性は妊娠する。

戦争で疎開。

義母と3人での生活が始まるが、うまくいかない。

主人公は亡き母親の声に導かれ、異世界に迷い込む。

そこで、トリックスター(『君たちはどう生きるか』ではアオサギ)を初め、様々なキャラクターと出会う。

主人公は成長し、元いた世界に戻ってくると、義母と和解する。

以上が類似しているあらすじです。

が、大まかな流れは、同じであるように見えますね。

登場人物

両作を比較し、対になっている登場人物をまとめました

「君たちはどう生きるか」「失われたものたちの本」
マヒト(主人公)デイヴィッド(主人公)
ヒサコ(母親母親
ショウイチ(父親父親
ナツコ(継母)ローズ(継母)
キリコ木こり
ばあや(キリコ含むお手伝い)7人の小人
じいや(お手伝い)ブリッグス(お手伝い)
アオサギねじくれ男
大叔父様ジョナサン(叔父)
ヒミローランド
インコ大王リロイ
インコ

どの主要キャラクターも、対となるキャラクターを見つけることができました。

対となる根拠を簡単に

ヒミとローランドの共通点は、主人公の力になってくれるところや、攻撃力が強い点です。

インコ大王とリロイの共通点は、獣人で、主人公の命を狙っている集団のボスという点です。

インコと狼の共通点は、主人公を狙っていて、多量にいるという点です。

キリコと木こりの共通点は、主人公を導いてくれるところです。

余談ですが、キリコの名前の由来は、ネット上では、ジョルジョ・デ・キリコからきている(オマージュだ)という意見が多いです。

「木こり」の文字を入れ替えてもキリコになりますね。

『失われたものたちの本』に出てくる登場人物が、『君たちはどう生きるか』の登場人物のモデルになっているかもしれません。

しかし、『君たちはどう生きるか』に出てくる登場人物には、全て実在のモデルがいることが分かっています。

▼詳しくはこちらでご確認下さい。

オマージュ作品はこちら▼

『君たちはどう生きるか』『失われたものたちの本』違い

続いて、両作品の異なる点です。

それは当然多くありますが、大まかにあげます。

ジブリ『君たちはどう生きるか』と『失われたものたちの本』との違い

アオサギが良い奴
(対となるねじくれ男は悪い奴)

異世界の中は全体的に全て違う
(王が主人公に跡を継いでほしいというのは同じ)
(童話をオマージュしていると見られるところは同じ)

主人公が母親の子供時代と会う
(原作に母親が子供の頃は出てこない)

大叔父様に威厳がある
(対となる叔父様はおどおどしている)

主人公が現実世界に戻ったところで終わる
(原作では主人公が老いて再び異世界に行ったところで終わる)

細かい違いを挙げていけばキリがないですが、大まかにはそのようなところだと思います。

改めて

ジブリ『君たちはどう生きるか』は、
原作『失われたものたちの本』がベースでありながら、
オリジナル要素の多いオリジナル作品です。

しかし、

(原作としない割には、パクりすぎじゃない?)

と思う人がいるというのも理解できます。

しかし原作という割には、違いすぎていて、クレームものです。

これをパクりと思うか、パクりでないと思うかは、個々の感性にゆだねりられることとなりそうです。

いえることは、

ジブリ『君たちはどう生きるか』は『失われたものたちの本』をオマージュしていること、

少なくとも、小説『君たちはどう生きるか』よりかは、『失われたものたちの本』の方が映画の原作に近い立ち位置にいる、

ということのように思います。

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『失われたものたちの本』ネタバレ

『失われたものたちの本』主な登場人物

〈主人公〉
デイヴィッド
この物語の主人公。
12歳の少年。
本が大好き。

〈現実世界の住人〉
デイヴィッドの母親
デイヴィッドが12歳のときに、病気で亡くなってしまう。
本が大好き。

デイヴィッドの父親
数字が得意で、かつては大学講師をしていたが、現在は政府で、敵国(ドイツ)の通信の暗号を解読する仕事をしている。
昔は本が大好きだったが、現在では新聞ばかり読むようになった。

ローズ
デイヴィッドの父親の再婚相手であり、デイヴィッドの継母。
母親が通院してた病院の理事。

ジョージ―
デイヴィッドの父親とローズの間に授かった男の子。
デイヴィッドの義理の弟。

〈現実世界の住人〉
木こり
異世界の案内人。
異世界に迷い込んだデイヴィッドに力を貸してくれる。

ねじくれ男
トリックスター。
物語を作るのが好き。
デイヴィッドを現実世界に帰したくない。

ローランド
騎手。
異世界に迷い込んだデイヴィッドに力を貸してくれる。

ジョナサン
異世界の王で、ローズの叔父。
現実世界では14歳のときに行方不明となっている。
本が大好き。
ジョナサンがかつて現実世界で使っていた本がいっぱい置いてある部屋は、現在ではデイヴィッドが使っている。

アンナ
ジョナサンの腹違いの妹。
現実世界では7歳のときにジョナサンと共に行方不明となっている。

リロイ
人狼。
ジョナサンの悪夢によって生み出された。
デイヴィッドを狙っている。

映画『君たちはどう生きるか』を観たことのある人であれば、
『失われたものたちの本』の登場人物の説明を見た時点で、
誰が誰にあたるのか、
見当をつけることができたのではないかと思います。

『失われたものたちの本』あらすじを簡単に

母親を亡くして孤独に苛(さいな)まれ、本の囁(ささや)きが聞こえるようになった12歳のデイヴィッドは、死んだはずの母の声に導かれて幻の王国に迷い込む。赤ずきんが産んだ人狼、醜い白雪姫、子どもをさらうねじくれ男……。そこはおとぎ話の登場人物たちが蠢(うごめ)く、美しくも残酷な物語の世界だった。元の世界に戻るため、少年は『失われたものたちの本』を探す旅に出る。

東京創元社(http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488517069)

『失われたものたちの本』あらすじを詳しく※ネタバレあり

第二次世界大戦下のイギリス。

12歳のデイヴィッドは、最愛の母を病気で亡くしてしまう。

それから、半年くらいが経ったある日。

父親に、恋人「ローズ」を紹介される。

ローズは、デイヴィッドと仲良くしようと親切にしてくれるが、デイヴィッドはそれを受け入れることができなかった。

やがて、ローズは父親の子「ジョージ―」を身ごもり出産。

父親とデイヴィッドは、ローズの家に越してくることになった。

ローズは、本が好きなデイヴィッドの為に、14歳のときに行方不明になった叔父の本がいっぱい置いてある部屋を用意してくれていた。

デイヴィッドは依然として自分から父親のことも奪ってひとりぼっちにしたローズ・そして腹違い弟のことを許すことができないでいた。

次第にローズは、赤ん坊を育てることの大変さを痛感するようになる。

ローズはイライラするようになり、デイヴィッドの憂鬱な態度にもイライラするようになり、ふたりが会話することはほとんどなくなった。

父親も家の雰囲気が悪いことに疲れていた。

そしてついに、デイヴィッドとローズは大喧嘩してしまう。

デイヴィッドは父親にひどく怒られ、ひとり部屋で、母親を亡くしてから発症するようになった発作を起こして気を失う。

目を覚ますと、亡くなったはずの母の声に導かれ、沈床園と出た。

そこで、デイヴィッドは異世界に迷うこととなった。



デイヴィッドは、異世界で、木こりに会う。

異世界は、人狼に襲われたり、人狼が蔦に殺戮されたりと、とても恐ろしい場所だった。

木こりは、デイヴィッドが元いた世界に帰る方法は、この世界の王様が持っている「失われたものたちの本」に記されているだろうと言う。

また、ねじくれ男に連れ去られた子供は二度と戻らないということを聞く。

木こりとデイヴィッドは、王のいる城を目指して一緒に旅をするが、途中、木こりが人狼からデイヴィッドをかばう為に犠牲となる。

横暴な白雪姫と、その命を狙う7人の小人。

異世界は、知っているおとぎ話のようで、どれも奇妙で恐ろしい。

その後、騎手のローランドと馬のスキュラと出逢い、力になってくれるが、途中、ローランドが眠れる森の美女にやられてしまう。

旅の途中で、ねじくれ男は何度もデイヴィッドの前に現れ、「幸せにしてやろう」「母親に会わせてやろう」と甘い言葉で誘う。

条件は、弟の名前を教えることだった。

だがデイヴィッドは弟の名前を教えることにどうしてか躊躇してしまう。

泣いてばかりのわがままな赤ん坊だが、自分に笑顔を向けてくれて、自分の手を握ってきたジョージ―を愛しいと思っている自分に気が付く。


デイヴィッドが王の城に辿り着くと、王は全てを知っていて、歓迎してくれた。

その後、デイヴィッドは、王とねじくれ者の不穏な会話を盗み聞きしまう。

そして、王の「失われたものたちの本」を盗み見することで、2人が自分を騙していることに気が付き、確信を得る。

ねじくれ者は、「こいつさえいなければ」という嫉妬心のある分別のつかない子供を狙って、代々、異世界の王にしてきた。

王にさせる条件は、嫉妬対象人物の「名前」を教えてもらうこと。

王・ジョナサンは、14歳のときに、両親にかわいがられていた妹・アンナに嫉妬し、ねじくれ者に言われるがままに、アンナの名前を口にしてしまったのだった。

ジョナサンは罪悪感をずっと抱いており、早くこの人生を終わりにしたいと願っていた。

アンナはというと、城の地下室の瓶の中に7歳のままの小さな姿で閉じ込められていた。

アンナは、あの日心臓をねじくれ者に食べられてしまい以来今までずっと、魂だけが瓶の中に囚われていた。

ジョナサンのことは、子供だったし後悔していると思う、何があったって自分の兄だから、と言って恨んではいなかった。

ねじくれ者は、心臓を食べた子供の寿命分、生き長らえることができた。

今はもう寿命が差し迫っており、早く次の心臓を見つけなければならなかった。

デイヴィッドは最後までジョージーの名前を守り、ねじくれ者を倒すことに成功した。

すると木こりが生きていて、元の世界に戻るのを見送ってくれた。

「また戻ってこられるかな」とデイヴィッドは別れがさみしくなり訪ねると、木こりは答えた。

だいたいはまた戻ってくるな。最後にはね

ジョン・コナリー 田内志文 訳「失われたものたちの本」


デイヴィッドは病室で目を覚ました。

ローズがいて、彼女はデイヴィッドが目を覚ましたことを、涙を流して喜んだ。

デイヴィッドは、「ごめんなさい」とだけ言って再び眠りに落ちた。

その後、父親は、デイヴィッドをどんなに心配して、どんなに探しまわったかを話してくれた。

父親とローズは、発見後のデイヴィッドがすごく大人になっていたので、不思議に思って話し合った。

実は、異世界は、その人の心に住む恐怖が姿形を取って生み出される場所である。

デイヴィッドは、己の中にある恐怖心に打ち勝つことによって成長したのだった。


その後の人生で、デイヴィッドは、ねじくれ者の言ってたことの中にも真実があったことに気がつく。

それは、人生には幸福なことばかりではなく、苦しみや悲しみもたくさんあるということ。

ジョージーとは心から仲の良い兄弟となった。

あれから両親は離婚したけれど、デイヴィッドはどちらとも良い関係を続けた。

その先、父親は心臓発作で亡くなり、

ジョージーは兵役について亡くなり、

結婚した妻と子を出産で亡くした。

年老いていくローズの面倒を見た。

そして自分も年を老い、体が弱った頃。

デイヴィッドは再び、沈床園へ足を運んだ。

向こうの世界は大変穏やかになっていて、子供達の魂も安らかに眠っていた。

木こりがまた出迎えてくれた。

父親に似ていること、なんで前に来たときには気がつかなかったんだろうと思った。

スキュラもいて、山小屋からは、赤ん坊を胸に抱いた妻が出てきた。

『失われたものたちの本』感想

本を読んでる女の子

心情の描写がリアルで繊細で、引き込まれました。

異世界のシーンは、ファンタジーなこともあって読みづらいというか、集中して読まないと、内容に置いていかれると思いました。

異世界は、まるで現在の自分の心理状態が反映される「夢の中」だと思いました。

大人になったデイヴィットが再度訪れたら異世界は、すっかり穏やかになっていました。

それまで、苦しみや悲しみやもありました。

しかし豊かな人生を通じて、デヴィッドの心はすっかり穏やかなとものになっていたということなのでしょう。

「失われたものたちの本」は、その人の人生の日記のような存在なのではないでしょうか。

そして、木こりの別れの言葉。

「だいたいはまた戻ってくるな。最後にはね」

ジョン・コナリー 田内志文 訳「失われたものたちの本」

人は皆記憶がないだけで、異世界を旅をしている。

そして、人生の終わりには戻ってくる。

これは宗教的な考えかもしれないですが、

”自分の心と人の心を大事にして、良い人生を過ごせば、その人生を終えた後で、良い第2の人生を過ごせるよ”

”また会いたい人に会えるよ”

というメッセージがこめられているように感じました。

「会いたい人に会える」この言葉に幸福感を覚えな人は、恐らくいないですよね。

誤読後は幸福感が訪れます。

それで、宮崎駿監督のあの言葉なのではないかと思います。

そして個人的に一番心打たれたのは、

デイヴィッドが老いて異世界に戻ってきたとき、木こりの瞳に映った彼は少年のままだったという描写。

それから、

「どんなに年老いていようと、どんなに離れ離れでいようと、人はとこしえに父親の子供」

という言葉です。

本当にその通りだと、日頃から感じていることです。

向こうの世界では、人はきっと何歳にでもなるのでしょう。

あなたが逢いたい大切な人は、何歳の姿で、あなたの目の前に現れるでしょうか。

『失われたものたちの本』の訳者・田内志文による考察

YouTubeでは、
『失われたものたちの本』の訳者(田内志文)だというほんにゃく仮面さんが、
本を紹介しています。

さすが一文一文を訳したとだけあって、
一文一文咀嚼しているなと思わされる動画です。

『失われたものたちの本』の売上も伸びる※余談

映画「君たちはどう生きるか」の公開に伴い、
原作ではないとしながらも、
原作扱いもされる2冊。

売り上げはやはり伸びているようです。

漫画「君たちはどう生きるか」に関しては、一週間で5000部売り上げたそうです。

筆者は7/21に「失われたものたちの本」に購入しました。
場所が分からず店員さんに訪ねると、「ああ!」という感じで、聞かれ慣れている様子でした。

そして、
「1冊だけ入荷されたのがあるかも」ということで、
持ってきて下さったものをゲットしました。

「失われたものたちの本」のレビューサイトも確認したのですが、
最近投稿されたのものが多かったですね。

やはり、映画『君たちはどう生きるか』の影響で気になって手に取ったという人は、
多かったようです。

当時は、同作品の情報も出回っていなかったですしね。

実際、「失われたものたちの本」を読むことによって、
ジブリ「君たちはどう生きるか」への理解も深まったと感じました。

「オマージュ」と「パクり」の定義とは

最後に、オマージュとパクりの定義についてです。

「オマージュオマージュ、ていうけれど、オマージュとパクりの違いって何?」

と感じている人も多いのでは。

それで、調べてみました。

結論。

定義はない。

オマージュと、パクりの違いについて、ハッキリとした定義はない、ということのようなんですね。

それでも分かりやすいと思ったのが、こちらの言葉でした。▼

「この作品の元ネタはコレです」と堂々と言えるのが“オマージュ”で、言えないものがパクリ

「君たちはどう生きるか」と時代背景も同じです。

オリコンニュース(https://www.oricon.co.jp/news/2049239/full/)

なるほど、ですね。

うしろめたさがあるか、ないか、ということですね。

つまりはやはり気持ちの問題ということになるんですね。

君たちはどう生きるか|原作ネタバレと映画の違い…関係ないし無視パクり?【まとめ】

ジブリ映画「君たちはどう生きるか」の原作者は、
宮崎駿監督であり、オリジナルストーリー

しかしオマージュ作がある。

それが、次の2作品。

小説「君たちはどう生きるか」

小説「失われたものたちの本」

小説「君たちはどう生きるか」からは、タイトルを借用した。

また、小説を作中に登場させた。

より原作に近いのは「失われたものたちの本」

読むと、
ジブリ映画「君たちはどう生きるか」のベースとなっていることが分かる。

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