2023/7/14、10年ぶりに公開された宮崎駿監督の最新作、「君たちはどう生きるか」。
この映画には、多くのオマージュシーンがちりばめられているといいます。
「オマージュだ!」とはよくいうけれど、分からない者としてはもやっとしますよね。
「君たちはどう生きるか」には一体どんなオマージュがちりばめられているというのか、早速確認していきましょう。
※ネタバレ含みます。
ジブリ映画「君たちはどう生きるか」オマージュシーン【童話編】
「眠れる森の美女」
「君たちはどう生きるか」には、序盤で廃墟となった塔が出てきます。
その塔の中には、アオサギによってつくられた母親がソファーで眠っているシーンが出できます。
神秘的なシーンですが、これは、「眠れる森の美女」を連想させます。
「ふしぎの国のアリス」
マヒトたちは、アオサギを追いかけた結果、下の世界に落ちます。
「不思議の国のアリス」では、アリスがうさぎを追っかけて穴に落ち、不思議の国に行きました。
しかしそれは本当に夢の中で、アリスは最後夢から目覚めることによって、現実世界に戻ってくるというオチでした。
「君たちはどう生きるか」に出てくる下の世界も、不思議なことがいっぱいで、まるで夢の中のよう。
「君たちはどう生きるか」を観た観客の中にも、「映画を観ている間、まるで夢でも見ているみたいだった」という人が結構いました。
「ふしぎの国のアリス」にも、「君たちはどう生きるか」にも、ずらりと並んだドアが出てきます。
マヒトたちは、このずらりと並んだ内の1つのドアを開けて、元いた世界へと帰ってきます。
「白雪姫と7人の小人」
「君たちはどう生きるか」には、マヒトの世話をしてくれる7人のばあやが出てきます。
7人のばあやは、下の世界でも小さな置物として出てきて、敷布団で寝ているマヒトの周りに並べられています。
こうして、マヒトを守ってくれているのだそうです。
このシーンは、ベッドで眠る白雪姫(マヒト)と、それを見守る7人の小人の姿に重なりますね。
ジブリ映画「君たちはどう生きるか」オマージュシーン【絵画編】
アルノルト・ベックリン画「死の島」
絵画「死の島」は、「君たちはどう生きるか」に出てくる墓の島ソックリです。
「死の島」には糸杉が描かれているのですが、糸杉には、死・哀悼・不死・再生といった花言葉があるそうです。
その為、墓地に植えられることも多いそうです。
絵画「死の島」は、正に墓の島にピッタリですね。
ジョルジョ・デ・キリコ画「通りの神秘と憂鬱」
「君たちはどう生きるか」の終盤に出てくる、マヒトたちが大叔父様に会いに行くのに通る回廊。
この回廊が、絵画「通りの神秘と憂鬱」と似ています。
絵画「通りの神秘と憂鬱」は、第一次世界大戦が始まった直後である1941年の作品です。
作者であるジョルジョ・デ・キリコは、その翌年に従軍したといわれています。
そして次の言葉が残されています。
戦争の結果は、おそらくこのような絵のものになる
「君たちはどう生きるか」は、太平洋戦争末期を描いた作品です。
通じている部分はありますね。
ルネ・マグリット画「ピレネーの城」
「君たちはどう生きるか」に出てくる大叔父様がいる空に浮かぶ巨大な石。
これは、絵画「ピレネーの城」に似ています。
作者のルネ・マグリットは、この城への入り方について、次のように言葉を残しているといいます。
海からも陸からも登ることができない。空や想像力によってのみ入ることができる。
想像力によってのみ入ることができるとは、大叔父様の石にはぴったりのような設定ですね。
なんといったって、大叔父様のモデルは、スタジオジブリ設立者の高畑勲さんなのです。
ジブリ映画「君たちはどう生きるか」オマージュシーン【過去ジブリ作品編】
ジブリ映画「蛍の墓」
「君たちはどう生きるか」は、戦争で町が焼かれているシーンから始まり、その後、主人公は疎開します。
これは、「蛍の墓」と同じ始まりですね。
2つの作品は時代背景も同じで、太平洋戦争末期を舞台に描かれています。
ジブリ映画「風の谷のナウシカ」
「君たちはどう生きるか」では、インコマンたちが「ウラー」と歓声を上げるシーンがあります。
このシーンは、「風の谷のナウシカ」のオマージュであるように思われます。
「ウラー」というのは、ロシア語で「万歳!」という意味です。
「風の谷のナウシカ」の原作コミックでは、風の谷の住人が「ウラー」と歓声を上げるシーンを確認することができます。
「君たちはどう生きるか」に出てきた横穴に、「風の谷のナウシカ」に出てきたと蟲と見られる生物がいます。
「君たちはどう生きるか」大叔父様のマントには、「風の谷のナウシカ」の王蟲の目玉のようなものが埋め込まれています。
ジブリ映画「天空の城のラピュタ」
「君たちはどう生きるか」に出てくる大叔父様がいる空に浮かぶ巨大な石は、天空の城のラピュタを彷彿とさせますね。
「君たちはどう生きるか」に出てくる、インコ大王とインコマンたち。
主人公を捉えようと躍起になっているその姿は、「天空の城のラピュタ」に出てくるムスカ大佐と部下たちを彷彿とさせます。
「君たちはどう生きるか」「天空の城のラピュタ」両作の主人公ともに、外壁をよじのぼるシーンがあります。
ジブリ映画「となりのトトロ」
「君たちはどう生きるか」では、マヒトたちが田舎に疎開します。
「となりのトトロ」でも、サツキたち一家は田舎に引っ越しきました。
「君たちはどう生きるか」に出てくる森に繋がる草木のトンネル。
これは、「となりのトトロ」のメイがくぐった草木のトンネルのオマージュシーンであるように思えますね。
メイがトトロを追いかけていくシーンは、記憶に強く残りますよね。
「君たちはどう生きるか」に出てくるたくさんのインコマン。
これは、「となりのトトロ」に出てくるトトロと絵のタッチが似ているので、
トトロを彷彿とさせるという意見も出ています。
「かわいい」という人もいれば、「かわいくない」という人もおり、意見は真っ二つに割れるようですね。
アオサギやペリカンに比べて、インコだけが単純な描写なのは、
「リアルなインコにしちゃうと、細かい仕草も気にしないといけなくなりますよね。そうではない漫画っぽいデザインにしないと宮崎さんもしんどかったんじゃないかと思います」
と作画監督の本田雄さんは話しています。
(書籍「ジ・アート・オブ 君たちはどう生きるか」より)
そうであれば、納得するしかありません。
インコマンはあくまでインコの進化系、ということでしょうか。
インコマンはインコのことを、「ご先祖様」と呼んでいました。
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ジブリ映画「紅の豚」
「君たちはどう生きるか」のナツコと、「紅の豚」のジーナ。
ふたりが似ているということで、ジーナファンにはうれしかったようです。
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ジブリ映画「もののけ姫」
「君たちはどう生きるか」の主人公であるマヒトはイケメンです。
「アシタカ似のイケメンがいる!」と早速観た人のハートをつかんでいます。
容姿や、クールな雰囲気はアシタカと確かに似ているかもしれないですね。
弓矢を使うところも同じです。
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アオサギと、「もののけ姫」のジゴ坊が似ているといわれています。
「君たちはどう生きるか」に出てくるワラワラは、白くて小さく、わらわらといます。
これは、「もののけ姫」に出てくるこだまのオマージュなのではないかと考える人が多いです。
ジブリ映画「千と千尋の神隠し」
「君たちはどう生きるか」のアオサギの顔が人間になったときの姿が、「千と千尋の神隠し」に出てくる、湯婆婆と似ています。
湯婆婆がマントに身を包んで鳥のようになって空を飛ぶときの姿や、湯バードと似ています。
また、湯婆婆は、「君たちはどう生きるか」に出てくるばあやたちとも似ているといわれています。
「君たちはどう生きるか」に出てくるナツコの奇妙な産小屋。
この産小屋は、「千と千尋の神隠し」に出てくる坊の部屋を思わせますね。
ナツコの産小屋で、マヒトは、多量の白い紙に襲われます。
この白い紙の正体ですが、絵コンテには、「御幣」「紙の蛇」と書かれていました。
「千と千尋の神隠し」でも、ハクが多量の白い紙に襲われます。
オマージュシーンであるように思われます。
「君たちはどう生きるか」に出てくるインコマン。
このインコマン、「千と千尋の神隠し」の油屋を訪れるお客様と似ています。(画像参照)
ジブリ映画「耳をすませば」
「耳をすませば」では、読書家のヒロインとヒーローが出会い、恋愛をします。
「君たちはどう生きるか」では、マヒトが、母親から贈られた本と、その本に記されたメッセージに気が付いた後で、森の中に姿を消したナツコを探しに旅立ちました。
「君たちはどう生きるか」には、石が発光する洞窟が出てきます。
「耳をすませば」の主人公・雫の夢の中にも、宝石がうまった洞窟が出てきました。
オマージュシーンであったように思われます。
ジブリ映画「崖の上のポニョ」
「君たちはどう生きるか」には、多量の鯉が出てくるシーンがあります。
水の描写含め、これらは、「崖の上のぽにょ」のオマージュであるように思われます。
「君たちはどう生きるか」のマヒトの頭には、自分でつけた傷のせいではげた部分があります。
このはげが、「崖の上のポニョ」のソウスケのオマージュだという声があります。
ジブリ映画「ハウルの動く城」
ヒミの火は、「ハウルの動く城」のカルシファーを連想させます。
ヒミは暖炉の中から姿を現しました。
カルシファーは、城内の暖炉を住みかとしています。
ジブリ映画「借りぐらしのアリエッティ」
「君たちはどう生きるか」のマヒトたちが引っ越ししてきた屋敷の庭。
この庭が、「借りぐらしのアリエッティ」の舞台となった庭のオマージュであるように思われます。
「借りぐらしのアリエッティ」の舞台となった庭のモデルとなったのは、青森県にある盛美館だといわれています。
盛美館の雰囲気は、「君たちはどう生きるか」に出てきた庭と屋敷そのものです。
ジブリ映画「風立ちぬ」
「君たちはどう生きるか」に出てきた墓の島と似た映像が、前作である「風立ちぬ」にも出てきました。
ジブリ映画「君たちはどう生きるか」オマージュシーン【書籍編】
吉野源三郎作「君たちはどう生きるか」
映画「君たちはどう生きるか」は、タイトルを、書籍「君たちはどう生きるか」から拝借しています。
その理由は、宮崎駿監督が感銘を受けた本だからです。
この書籍は、作中にも、”母親が息子のマヒトに残した書籍”として出てきます。
が、原作とはなっていない為、内容は全く別物です。
書籍「君たちはどう生きるか」は、映画公開にあたり、発行部数が累計180万部となり、岩波文庫歴代1位になったということです。
宣伝効果の大きさを感じますね。
知らなければ、購入することもできませんね。
書籍「君たちはどう生きるか」には、小説(原作)と漫画とがあります。
ジョン・コナリー作「失われたものたちの本」
そして続いてが、これこそが「君たちはどう生きるか」の原作になりえると思われる「失われたものたちの本」です。
「君たちはどう生きるか」には童話のオマージュが出てきましたが、「失われたものたちの本」の中にも出てきます。
「失われたものたちの本」は、宮崎駿監督の推薦本であり、帯には、
「ぼくをしあわせにしてくれた本です。出会えてほんとうに良かったと思っています」
というメッセージが書かれています。
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ジブリ映画「君たちはどう生きるか」オマージュシーン【建造物編】
ボーリンゲンの塔
「ボーリンゲンの搭」とは、スイスの精神科医で心理学者であるカール・グスタフ・ユングが建てた石の塔です。
晩年に建てられました。
「ボーリンゲンの搭」は、カール・グスタフ・ユングにとって、「避難場所」であり、「母性の象徴」だったといわれています。
「君たちはどう生きるか」に出てくる搭は、この「ボーリンゲンの搭」をオマージュしているといわれています。
ナツコは「避難場所」を求めて塔に逃れていったと考えられますし、塔の中には、マヒトの母親がいました。
宮崎駿監督のジブリ過去作品オマージュは本当?
「君たちはどう生きるか」に出てくる、童話や絵画、書籍などのオマージュシーン。
これらは、宮崎駿監督が好んでこれまで影響を受けてきた作品なのであろうと推測することができます。
では、
過去ジブリ作品をオマージュしたというのは、本当なのでしょうか。
これらは、公式が発表したわけではありません。
あくまで視聴者が感じたことです。
なので、確かなことは分かりません。
偶然なのか、狙いがあったのか、どちらとも受け取れるようなオマージュシーンばかりです。
ネット上の意見も割れています。
「オマージュではない」派の人の意見としては、たとえば次のようなものがあります。
あれだけ過去の作品にとらわれない人が、ないと思う。
たまたまだよ
狙ってなくても、同じになっちゃうんじゃないの?
さすがにアイディアも尽きるよ
あなたは、どう感じますか。
君たちはどう生きるか|過去ジブリ作品などオマージュシーン【まとめ】
- 童話「眠れる森の美女」:母親(つくりもの)がソファーで眠っているシーン
- 童話「ふしぎの国のアリス」:穴から落ちて夢の中のような世界に迷い込んで戻ってくる
- 童話「ふしぎの国のアリス」:ドアがずらりと並んだシーン
- 童話「白雪姫と7人の小人」:7人のばあやと7人のばあやの小さな置物が出てくるシーン
- 絵画「死の島」:墓の島
- 絵画「通りの神秘と憂鬱」:回廊
- 絵画「ピレネーの城」:空飛ぶ石
- ジブリ「蛍の墓」:舞台は太平洋戦争末期の日本。空襲にあい、その後疎開する。
- ジブリ「風の谷のナウシカ」:インコたちが「ウラー」と歓声を上げるシーン
- ジブリ「風の谷のナウシカ」:横穴に蟲がいる
- ジブリ「風の谷のナウシカ」:大叔父様のマントに王蟲の目玉
- ジブリ「天空の城のラピュタ」:空に浮かぶ石
- ジブリ「天空の城のラピュタ」:インコ大王とインコたち
- ジブリ「天空の城のラピュタ」:外壁をよじのぼる
- ジブリ「天空の城のラピュタ」:田舎に疎開
- ジブリ「となりのトトロ」:草木のトンネル
- ジブリ「となりのトトロ」:インコ
- ジブリ「紅の豚」:ナツコ
- ジブリ「もののけ姫」:イケメンな主人公マヒトと弓矢
- ジブリ「もののけ姫」:アオサギ
- ジブリ「もののけ姫」:ワラワラ
- ジブリ「千と千尋の神隠し」:アオサギ、ばあや
- ジブリ「千と千尋の神隠し」:奇妙な産小屋
- ジブリ「千と千尋の神隠し」:主人公を襲う大量の白い紙
- ジブリ「千と千尋の神隠し」:インコ
- ジブリ「耳をすませば」:本が物語を動かす
- ジブリ「耳をすませば」:石が光る洞窟
- ジブリ「崖の上のポニョ」:鯉・水
- ジブリ「崖の上のポニョ」:マヒトのはげ
- ジブリ「ハウルの動く城」:ヒミの火
- ジブリ「借りぐらしのアリエッティ」:屋敷の庭
- ジブリ「風立ちぬ」:墓の島
- 書籍「君たちはどう生きるか」:タイトルと作中に吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」
- 書籍「失われたものたちの本」:ジョン・コナリーの「失われたものたちの本」をオマージュ
- 建造物「ボーリンゲンの搭」:搭(異世界)